2004 [8th] Japan Media Arts Festival Device Art Symposium "How We Create Media Art Works"
Presentation
by Sachiko Kodama


平成16年度(第8回)文化庁メディア芸術祭
デバイスアートシンポジウム「メディアアートはこう作る!」


プレゼンテーション:児玉幸子
2005年3月3日@東京都写真美術館


2.3■児玉幸子:プレゼンテーション

児玉:一番最初にお見せしたいのは、今、この、前に置いてあるタマゴ型の作品です。私は今、調布市の電気通信大学を拠点に、磁性流体を使ったアートのプロジェクトを行なっています。2000年ぐらいからそれを始めて、第5回目のメディア芸術祭で賞をいただきました。芸術家の竹野美奈子さんや、その他様々な人とコラボレートしながら作品を作っています。

 この小さなタマゴには、中央の部分に、もみの木のようなトゲトゲの形が出てきています。これは光に反応する仕組みになっていて、中の、液体でできたトゲの木は、暗くなるとピョコっと下がってしまいます。ちょっと暗くしてみますね。[スクリーン]今、消えてしまいました。中の鉄芯が残っていますが、トゲトゲの木はなくなってしまいました。

 今日はデバイスアートのシンポジウムなので「できれば小さい作品を持ってきていただけないか」と言われて、はて……困りました。これまでの私の作品は、だいたい6m×6mとか、広い場所に展示してきたものが多かったので、小さなものにチャレンジしてみたのですが……。


草原:今のお話を補足しますと、すでに児玉さんの作品を観た方もここには多いとは思いますが、黒い液体の磁性流体が音に反応して、トゲトゲになったりワーッと落ちたりするという、すごく迫力のあるものです。つい最近までロサンゼルスで展示をされていて、昨日戻られたところですよね。


児玉:はい。ロサンゼルス北部に「Skirball Cultural Center」というユダヤ系の文化センターがあり、そこではアインシュタインの特殊相対性理論誕生100周年を記念した『アインシュタイン展』が今行なわれています。それと連動した企画で、アート&サイエンスの境界にある作品を集めた企画展がゲッティセンターの協力で開かれ、そこで『Protrude, Flow(突き出す、流れる)』【図1】【図1】クリックして拡大というインスタレーションを2ヶ月半ほど展示してきました。

 そこでも同様にシンポジウムがありまして、次にお見せする映像作品を上映しました。磁性流体……強い磁場で色々な形を作る不思議な液体を使ったインスタレーションを撮影した映像で、『呼吸するカオス(Breathing Chaos)』【図2】【図2】クリックして拡大【図3】【図3】クリックして拡大【図4】【図4】クリックして拡大というタイトルです。約8分とちょっと長いのですが、ぜひご覧になってください[ビデオ映像]。

 どういうコンセプトで今の映像作品を作ったかというと……重力、磁力などの物理的な力の中に生まれてくる液体の現象のゆらぎ、カオス的なゆらぎの中に、同時的全体的に秩序が生まれ、そして消えていく様子を、直感的、身体的に理解するために作りました。きらめく光の表面の、コントラストの強い映像の中に植物の映像をモンタージュしながら……液体の形は、スパイク(トゲ)が並んで動くことによって、ウニのように見えたり、もみの木のように見えたり、ハリネズミのように見えたりもします。そして、インタラクティブ・アートとしてそれを使うと、観る人はすごく楽しんでくれて、「まるで動物が動き回っているみたいだ」と言います。デバイスという言葉に引き寄せて考えてみると、例えば花や草や木の実などは、いわば自然の力が生むデバイス、あるいは、自然の中に現われてくるデバイスのようなものではないでしょうか。

 サウンドは小倉一平さんが作ってくださって、彼も筑波大学出身の人です。今の映像のDVDはお頒けできますので、もし気に入った方がいらしたら、後で私の方にメールをください。


 次に、下の段の左側、これは『波と海胆(ウニ)』【図5】【図5】クリックして拡大【図6】【図6】クリックして拡大【図7】【図7】クリックして拡大という作品で、大きさは幅が60センチ程度のものです[ビデオ映像]。

 これは箱庭のようなものを最初考えて作ったものですが、小さい陶器の容れ物の中に黒い不思議な池があって、その2つの池の中を小さなウニが行ったり来たりする、小さな物語が入っている作品です。これも磁性流体という黒い液体を使っています。

 メカニズムは、浅い容器の下に小さな電磁石を64個敷き詰めていて、それに代わるがわる電圧をかけることで磁場を次々と作り出していく仕掛けです。[スクリーン]これは小さなウニが右側の小さな池に出てきたり、左の大きな池に出てきたりするところ。[スクリーン]これは二匹のウニが追いかけっこをして、そのうち一匹は消えてしまう。そうするともう一匹は寂しくなって、相方を探し回るという場面です。[スクリーン]これは「雨降り」のモードです……(磁性流体の池の中に、雨が降っているような波紋が出る)。全てのシーンを今日のプレゼンの時間内でお見せすることはできませんので、このあたりで。とにかく私は、磁性流体を使ったこのような作品を作って、今現在も進めています。(拍手)


草原:後で全体ディスカッションの時間もあるので、その時に余裕があれば、またお願いします。どうもありがとうございました。

 ちなみに児玉さんの『Protrude, Flow』が《SIGGRAPH》に出品された時、さっきの映像作品に出てきたようなシーンが、リアルでビデオ撮影され、背後のスクリーンに投影されていました。《SIGGRAPH》はCG関係者やバーチャル・リアリティ関係者が集まるところなので、みんな、入ってきた途端、そこに映っている映像はてっきり3DCGだと思うわけです。ところが、近寄ってみれば実は本物の液体がその形で動いていたので、すごくビックリしていたことを思い出しました。「シミュラクルとシミュレーション」という話がありますけれど、まさにみんなシミュレーションの方に馴れてしまっていたので、それが実際の物理的な現象だということに本当にビックリしたというエピソードです。

 では、プレゼンテーションとしてはこれがしんがりですが、土佐さん、お願いします。