Device Art CREST Symposium: "Enabling the Audience to Experience the Process of Creating Various Devices"
by Novmichi Tosa (Maywa Denki)


デバイスアートCRESTシンポジウム

デバイス制作のノウハウを、クラウドサイドに体験してもらう

プレゼンテーション:土佐信道(明和電機)
2007年5月18日@秋葉原UDX4F:アキバ3Dシアター

土佐:明和電機代表取締役社長、土佐信道です。よろしくお願いします。僕は今、「明和電機」という活動、それから「エーデルワイス」という活動をやっておりまして、その中で3つのシリーズを作っております【図1】【図1】クリックして拡大。魚をモチーフにしたナンセンスな器械たちの「Naki(魚器)」というシリーズ、それから電気で動く面白い楽器の「Tsukuba(ツクバ)」シリーズ、それから花をモチーフにして、ファッション性が非常に強い「EDELWEISS(エーデルワイス)」シリーズ……これら3つのシリーズをやっております。

 で、これらに共通することは、すべて道具(=デバイス)だということ。器械であり、道具であり、デバイスであるというのが共通しております。つまり、僕が使わないと意味をなさないというモノたちです。

 僕はこういうモノを13年間作ってきたのですが、作るプロセスというのは、世界を見て「なんだろう?」という疑問がわきあがり、そこから「ひらめいた!」となりまして、「さあ、作るぞ」という3つのプロセスで作っております。図で描くとこう[スクリーン]ですね。「R」→「F」→「C」。「R」は「Receipt」「Receptor」。「F」は「Function」。「C」は「Communication」「Communicator」【図2】【図2】クリックして拡大。この3つのプロセスで色々なものを作ってきたのですが、そういうモノ作りのノウハウが僕にはたくさんあります。でもって、これらをですね……今までは僕自身が遊ぶ道具として「Naki」「Tsukuba」「EDELWEISS」というアート作品を作ってきたわけですが、これらのノウハウを使って、なんとか大衆の皆さん=クラウドサイドにこの面白さを体験してもらうことはできないか……と思いまして、現在考えていることが3つあります。

 それが「Naki」シリーズから発生した「OMOKEN」=「こどもおもちゃ研究所」というもの。それから「Tsukuba」シリーズから発生した「Knock!(ノック)」という音楽教育。それから「EDELWEISS」から出てきました「EDELWEISS no.O(エーデルワイス・ナンバー・オー)」というプロジェクトです【図3】【図3】クリックして拡大。今日はこれらについて、順番にご説明いたします。


4.1●「Knock!」

まず「Knock!」【図4】【図4】クリックして拡大というのは、明和電機の楽器のシリーズの基本である、「ノックをして音を出す」というデバイスを使って「子供達に分かりやすく、楽しく、コンピュータ・ミュージックまたはデジタル・テクノロジーの基礎を教えるプログラム」が作れるのではないか、という試みです。こういった電気で動く、そしてコンピュータ制御で動く器具をたくさん作っておりまして、昨年も韓国、台湾、香港、スイスで講演をしてまいりました。どこの会場でも大人気で、大ウケでした。日本独自のテクノロジーと……これ【図5】
【図5】クリックして拡大
は日本のヤンキースタイルですね(笑)……こういうものを各地で見せてきたのですが、全部オリジナルの楽器をコンピュータ制御で動かして、ショーをやるというものです。

 基本になるのはノックをする、こういうデバイスです。それをコンピュータで動かしているのですが、こういうもの【図6】【図6】クリックして拡大を使ってライブをやりながら、一方でその考え方を分かりやすく伝えるために「ノックマン」というキャラクターも作っております。人間がコミュニケーションをする時には……言葉を使ったり、映像を使ったり、会話をしたりと、色々な手法があるのですが、この「ノックマン」というのは、ノックでしかコミュニケーションができないという生き物のモデルを考えました。これ【図7】【図7】クリックして拡大はお互いにコミュニケーションしている図。これ【図8】【図8】クリックして拡大はシリアル(線的)に情報が伝わっていく図ですね。そういうキャラクターを作りました。

 これは子供に分かりやすく、ノックということを通して情報伝達の進化論を伝えようと思って作ったお話なのですが、そこからこういうオモチャ【図9】
【図9】クリックして拡大
が生まれたりもしました。この「Knock!」という音楽教育には、やはり「Tsukuba」シリーズで得た技術的なノウハウと、それから「ノックマン」の分かりやすさ、これらを合体させたものが含まれています。

 例えば子供にバチを与えればバンバン遊ぶわけですが、その先にお母様方がいきなり楽譜を与えちゃうと、子供達は困惑してしまい、訳が分からなくなるという状況がある。それで、例えば「ノッカー」(knocker:物体を叩いてノック音を出す装置)を与えると……スイッチを押すと音が「ポン」と鳴るという、すごく感覚的に分かりやすい遊びがまずできまして、さらにスイッチを増やせば、どんどん「ポコスカ」と鳴る。素材ライブラリーみたいなものを組み合わせれば、色々な音色が楽しめる。スイッチをマトリックスに切り替えると、今度はプログラムをして遊ぶようになる。そこまで来ればしめたもので、その考え方をコンピュータに移植すれば、そのコンピュータの自動演奏に併せて合奏したり演奏したりして楽しむことができる。

 大人向けではありますが、昨年1回その実験をしてみようというわけで、2日間でそれを体験してもらうワークショップをやりました。色々な素材を集めてきて、それに「ノッカー」を配線してつけてもらう。それから、コンピュータでプログラミングをする……という体験をしてもらって、最後に全員で合奏をやってまいりました【図10】
【図10】クリックして拡大

 この「Knock!」というプロジェクトを進めるのに一番重要なのは、やはり「安全で使いやすいミュージック・デバイスの開発」です。実はこれ、100ボルトで動くデバイスなので、非常に危険です。そこをどれだけ安全に、かつ分かりやすくできるかという……ハード面もソフト面も含めて、そういうものを作らなければいけないと思って、現在開発を進めております。

 今年は7月に「岡山デジタルミュージアム」で展覧会をやるのですが、そこで子供向けに、この「Knock!」のワークショップを開催する予定です。そして来年2月にはアメリカのワシントンD.C.で大規模な『ジャパン・フェスティバル』が開催されます。その中でも、高校生向けの「Knock!」のワークショップを行なう予定です。



4.2●「こどもおもちゃ研究所」=「OMOKEN」

もうひとつが「こどもおもちゃ研究所」、通称「OMOKEN」というものを進めております【図11】【図11】クリックして拡大。現在、子供がオモチャで遊ぶという状況は、オモチャ・メーカーがテレビや雑誌とタイアップして、子供に対してシャワーのようにオモチャの情報を与え、がんじがらめにして商品を買わせるという状況ですが、それをどうにかしたいな、と思っていまして……じゃあ、竹とんぼの時代に戻るかというと、それも現代社会ではちょっと難しい。つまり、現代社会になんとかマッチした玩具作りを考えられないかなぁ……というのが、この「OMOKEN」の考え方です。

 先ほどお話ししましたように、モノを作るというプロセスは「(1)まなぶ」「(2)ヒラメく」「(3)つくる」という3つのプロセスでできています。これは企業が商品を作る時もいっしょです。玩具メーカーが玩具を作る時も、やはり商品リサーチから学んで、会議でひらめいて、工場で作る……というプロセスは全く同様なのですが【図12】【図12】クリックして拡大、現在は会社側から子供側に向けての一方通行になっています。なんとかその軸をひっくり返せないかなぁ、と思っているのが、現在の僕の考え方の中心なのですが……。

 さらに、子供が考えたアイディアを企業に持っていく途中で、それらを整理するためのデータベース(database)が必要で、さらに、たくさんの会社が関わってきた場合、それらをプランニングする……この図【図13】【図13】クリックして拡大では「shop」と書いてありますが、そこも必要です。それらがうまくいけば、子供の発想を社会に還元するサイクルができるのではないかと思っております。それがこの「OMOKEN」のサイクルです。

 それぞれに様々な開発が必要だと思っています。(1)教材の開発や、(2)データ管理の開発、(3)参加企業の開発、(4)ショップ展開の開発……今はそれらに向けての準備段階で、色々な作業が必要だとも思っています。重要なのはやはり頭、発想方法の部分です。何を作るかを発想すること、つまり「発想法の教材」の開発。それから、安全で新しいオリジナル工具の開発も重要だと思っています。最終的にはそれらを統合した「OMOKEN」のラボみたいなものを作れたらいいなぁ、と思っています。  ちなみにこの「OMOKEN」の発想の出発点は、2001年に放送された『課外授業 ようこそ先輩』というNHKの番組内で、僕は「全く役に立たないものを子供に作らせる」というワークショップをやりました。それが非常に楽しくて、これを発展させて何かできないかな、と思ったのがきっかけです。

 昨年は同じワークショップを大人相手にやりました。おかしな発想法をさせて、それをもとに、その発想で生まれたものから(「明和グループ」という)グループ分けをして、それぞれに役に立たないプロダクトを(モックアップ[模型]ですが)作らせて、発表させるという授業をやりました。

 で、先ほども言いましたように、今年の夏には「岡山デジタルミュージアム」で、子供を対象にした「こどもおもちゃ研究所」をやろうと思っています。


4.3●「EDELWEISS no.0」

最後に「EDELWEISS」から生まれた「EDELWEISS no.O」【図14】【図14】クリックして拡大というプロジェクトについてご説明します。「EDELWEISS」というのは、花をモチーフにしたナンセンスな器械。そのテーマの深いところは、「男とは何か、女とは何か」というモチーフから出てきているのですが、そこから様々な器械などを作っております。そして実はこの「EDELWEISS」では、3つの領域が重なった部分を作りたいと思っています。ひとつがポエム(POEM)=詩的な部分、それからファッション性(FASHION)、そして技術(TECHNOLOGY)の3つです。

 これ【図15】【図15】クリックして拡大は昨年作ったオルゴールなのですが、プリンターの印刷技術を使って、上にある小さな獏が動くという趣向です。それからこれ【図16】
【図16】クリックして拡大
は、涙を流して時間を測る水時計なのですが、素材をできるだけ焼き物=セラミックに見せたいということで、樹脂を色々と工夫して、この形を作りました。あと、これ【図17】
【図17】クリックして拡大
は指輪ですが、温度で変わるインクを使っていまして、だから体温によって色が変わる指輪です。

 さらには『水晶花』【図18】【図18】クリックして拡大という和菓子も昨年作ってみたのですが、その時に調べたら、和菓子の木型職人さんが今ほとんどいなくなっているということが分かったので、木型に代わる素材として、ここではシリコン型を使って和菓子を作るという試みをやってみました。

 以上のように「EDELWEISS no.O」では、ファッションやアクセサリー分野での新素材や、デバイスの開発をやってみたいと思っています。


 まとめますと、これまで13年間、僕自身がアーティストとして作ってきた「Naki」「Tsukuba」「EDELWEISS」といったデバイスのノウハウを、今度はやはり大衆の皆さんになんとか伝えていきたいな、と思っています。つまりデバイスアートを作る上での、デバイスの開発ですね。やはり、日本独自の創造性に溢れたモノ作りの底あげを、子供たちや一般の皆さんとの交流を通じてやっていきたいな、と考えています。そういうことを、このCRESTで頑張っていきたいと思っています。