Device Art CREST Symposium: "Research Study on Device Art"
by Machiko Kusahara


デバイスアートCRESTシンポジウム

「デバイスアートの調査研究」

プレゼンテーション:草原真知子(早稲田大学文化構想学部)
2007年5月18日@秋葉原UDX4F:アキバ3Dシアター

草原:早稲田大学の草原です。私は、このプロジェクトの中で「制作のための方法論の構築」という分野を受け持っています。そのためには何が必要かというと、我々が今取り組んでいるこの「デバイスアート」とはどういうものなのか? 言い換えれば、それが従来のメディアアート、あるいはアートの考え方の中で、どういう位置づけになるのかをまず分析し、理論化する。

 そして、今度はそれを積極的に推進し、応用することによって、こういうふうにやっていけば新しい形のアート=デバイスアートという考え方に基づいたアートができる、あるいはそれによって、アート/デザイン/プロダクトといった各分野のあり方とテクノロジーの関係について、新しいアイディアが提案できるのではないか……といった辺りになります。

 現在のところは、この「分析と理論化」のところをやっている段階です。具体的には、岩田先生の最初の呼びかけに応じて集まった時、やはりメンバーの間でもこのデバイスアートという考え方に対してだいたいのコンセンサスがあって、そこで色々な議論を繰りひろげてきたわけですが、それを通じて出てきた様々な要因を整理して「デバイスアートとは何であるのか?」を定義していくことです。そのためには、我々が今やっていること……デバイスアートの特徴を抽出して、その背後にどのような思想やパラダイムがあるのかを明らかにしていくことが必要になってきます。

 さらに私は、去年1年間に国際学会で5、6回は研究発表をしているわけですが、こうした概念が国際的にも非常に注目を集めていることは確実なのですね。なぜかというと、今メディアアートの世界では、従来の西洋的な美術=アートの枠組み、いわゆるアート・ヒストリーに基づいたメディアアートの捉え方というのには限界がある/どこか間違っている、という理解が広がってきているからです。メディア論を含め、メディアアートの研究者の間で従来のスタンダードな西洋美術史に替わる別の視点が必要であるという気運が起こっています。そこに我々が出してきたデバイスアートというコンセプトが非常に大きな可能性として開けてきたということがあります。

 なので、現在何をやっているかというと、主として研究の分野では、アート&テクノロジーという視点からやっているわけですが、デバイスアートを見た場合、今までアートの世界で起こってきた様々なムーブメントや現象から見て、どのような特徴があるのか。例えばそれを、日本の文化的伝統とか、あるいはテクノロジーとアートの関係からどのように解釈すればいいのか、ということを分析しています。


9.1●現在までの活動

現在までのところ、チームメンバーにしばしばゲスト講師を加えたような形でシンポジウムや講演会を開催して……実はこれは、CRESTのプロジェクトが始まる前から、メディア芸術祭の一部として企画していたわけですけれど……講演会を開催して、その成果をまとめる。その中から、デバイスアートをどういうふうに捉えるかというキーとなる部分を見つけていく。そして、一連のシンポジウムを通じて、我々メンバー間の理解の共有を図り、新しいアイディアを蓄積していくこともやっています。それらをウェブ上で発表したり、何らかのまとめた形でパブリッシュしたいと考えているわけですが、そのまとめのところは今現在進行中です。

 それから、国際的な発信とフィードバック。日本にデバイスアートという考え方があり、その中に我々自身が日本的な要素を見出していることも、単に独りよがりに言っていても仕方がないので、そういう視点を国際学会などでぶつけることによって、フィードバックを得る。それによって、さらに検証していくプロセスが必要だと思っています。それから、海外からの講演者を呼ぶだけではなくて、機会があればあちこちで講演したり、専ら英語で記事や論文を書いてフィードバックを得ているという状況です。

 これは今年の1月にMIT Pressから出た『MediaArtHistories』【図1】【図1】クリックして拡大という本です。この分野で皆さんよくご存じの、例えばクリスタ・ソムラーとか、あるいはZKMや《Ars Electronica》の初期のディレクターであったピーター・バイベルとか、日本にもよく来ているエルキ・フータモとか……そういったメディアアートの分野でよく知られている人だけではなくて、例えばバーバラ・スタフォードとか、より広い分野で国際的に知られている人々が執筆者になっています。

 その中にデバイスアートについて私が書かせてもらえたことは非常に良かったのですが……このタイトル自体が『MediaArtHistories』というように、複数なのですね。つまり、アート・ヒストリーというのはアート論になるわけですけれど、それがもはやリニアではない、シンギュラーではなくて、多様な視点を必要としているのだという考え方から出てきています。その多様な視点のひとつとして、デバイスアートというものがここで提示できたことになります。


9.2●論じてきたテーマ

今までこうしたシンポジウムやディスカッションの中で、それから皆さんの作品を通じて、アートやデザイン、テクノロジー、ガジェット、こういったものがどういう関係にあるかということを、重要なテーマとしてディスカッションしてきました。

 例えばこの中で、八谷さんが以前に提示されたダイアグラム【図2】【図2】クリックして拡大が我々の議論のベースとして非常に有効であり、昨年度の《SIGGRAPH》のポスター発表にも使わせていただいています。これは全員の連名でポスターを出しています。

 それから、今日のプレゼンテーションでもキーワードが色々と出てきたわけですけれど、遊び心=プレイフルネス……これが、日本の「遊びの文化」とどういうふうにつながっていくか。さらには、例えば土佐さんやクワクボさんの話に出てきたような、社会的・教育的な視点、道具へのこだわり、見立て、素材へのこだわり、モノ作り……こういった部分がどれもけっこう日本におけるアートとテクノロジーの位置づけに関係しているわけです。

 我々はそういった部分を直感的に感じ取っているのですが、それをいかに総合的に体系づけていくかを、今詰めているところです。そして、それらについて色々と調べていけばいくほど……例えば「山口勝弘さんが15年ぐらい前に出された本で、こういうことを論じていた」というふうに、日本でもこういった視点がでも研究者やメディア・アーティストによって様々な形で論じられていたことが分かります。そうした今までに提案されてきたことを、デバイスアートという切り口からこのプロジェクトでひとつにまとめられるのではないかと考えています。


9.3●今年発表を予定しているテーマ

今年開催されるメディアアート系の国際シンポジウムで一番メジャーなテーマのひとつに、9月にベルリンで開催予定の「re:place」というものがありますが、そこで私が発表する予定のものが「A Turning Point in Japanese Experimental Art: 1964-1970(1964-70年・日本のエクスペリメンタル・アートの転換期)」というテーマで、一見、デバイスアートとは関係なさそうにも思えるのですが、実は日本の戦後アートが、いかにエンターテインメント性、パブリックアート性、それからインタラクティビティといったものを最初から内包してきたかを調べることによって、現在デバイスアートでやっていることのひとつの文化的潮流の基盤を考えよう、というテーマ設定でもあります(ちなみに1970年は大阪万博の年です)。

 もうひとつの「Externalizing Our Body: Device Art and Its Experimental Nature」(Mutamorphorsis, Prague, Nov.07)は……これまた、いくつかのプレゼンテーションでも出てきたトピックですが、デバイスアートにおける身体性というものが、まだ我々の間でも充分に議論されていないのですが、これは避けて通れない問題ですので、今後はそこのところも重点的にやっていこうと思っています。私の方からは、だいたいこんな感じです。



岩田:本日はCRESTのデバイスアート・プロジェクトの中間的な報告でした。予定時間をだいぶ超過しましたが、メンバー全員による発表を終えました。皆さんの熱意は十分に伝わったかと思います。最後までご清聴、ありがとうございました。