CREST Project
Device Art Symposium "Reflections on Commercializing Media Art"
Presentation
by Novmichi Tosa (Maywa Denki)


CRESTプロジェクト
デバイスアートシンポジウム「メディアアートを商品化するということ」

プレゼンテーション:土佐信道(明和電機)
2007年9月30日@日本科学未来館7F:みらいCANホール


2.3■土佐信道(明和電機):プレゼンテーション

土佐:こんにちは、明和電機代表取締役社長、土佐信道です。よろしくお願いします。今日は「デバイスアートの商品化」について、お話ししてみたいと思います。まず「デバイスアート」という言葉なのですが、これは日本語で書くと「道具」だなあ、と僕は思っています。つまり「道」が「アート」で、「具」が「デバイス」と。僕は明和電機という活動をしている中で、モノを作っているのですが、それらはすべて「道具」です。つまり僕、もしくは他の誰かが使わないと機能しない道具を作っています。なぜそうしたかというと、それらの「道具」を通して「自分の道」を知るということがしたかったからです。アートという探求の中で作品を作る時、道具を使うこと、それからそれを作ることによって、自分の道を探したいなと思って、作品=道具を作っています。「自分の道」ということが問題なのですが……英語で言うと「AM WEY」ですね。

 はい……次に行きたいと思います。明和電機では色々な道具を作っていますが、大きく分けると今、3つありまして、「Naki(魚器)」、「Tsukuba(ツクバ)」、「ARCLASSY(アルクラシー)」というシリーズ名がついています【図1】【図1】クリックして拡大。「Naki」というのは、魚をモチーフにしたナンセンスな機械ですね。やっぱり全部が何らかの道具、使うことで機能するものになっています。これが明和電機の出発点で、僕の大学院の修了制作から始まりました。この「Naki」シリーズの中には楽器がいくつかありまして、一番有名なのが指パッチンで木魚を鳴らす楽器、『指パッチン木魚』というものです。で、その楽器だけが独立して始まったのが、2番目の「Tsukuba」という楽器のシリーズです。楽器ですので、当然こちらも道具なのですが、電気で動くナンセンスな楽器をたくさん作りました。


2.3.1●「アート」から「プロダクト」へ

ちなみに今、見ていただいたのは、実は1点ものの「アート」なんですね。つまり、絵で言うところの「タブロー」です。それを、僕はプロダクト=「製品」にしていくことをやっています。

 これ【図2】【図2】クリックして拡大は、「アート」として作った魚のコード、『魚(ナ)コード』というものです。頭がオスプラグ、尻尾がメスプラグになっている、電源の延長コードで、1994年に作りました。そしてこれ【図3】【図3】クリックして拡大が、それを製品にした方の『魚コード』です。こちらの発売が1995年。前の方はアートで、1点しかありませんが、後者は大量生産で5万本作りました。ちなみに製品版の方は現在も販売しています。

 それで、この2つの「どこが違うのか」というお話をしたいのですが、まず、こちら(アート版)は骨が尖っています。だから踏んだら確実に足から血が出ます。そして、頭がオスプラグ、尻尾がメスプラグになっています。ところが、こちらのプロダクト版の方は逆になっていて、頭がメスプラグ、尻尾がオスプラグです。どうしてそうなったかというと、「アート」と「プロダクト」の間にある、とても大きな違いがそうさせました。それは「安全性」です。アートというのは、家で使うこともあるかもしれませんが、基本的には鑑賞するもの、彫刻品なので、踏んでもしゃあないだろう! で、頭から(プラグが)飛び出ているのが、プロダクト版ではなぜ反対になったかというと……頭をコンセントに挿します。そして、知らない人がその上をガッと踏んだら、ボキッと折れてしまうわけです。それじゃあ困るので、プロダクト版の方はここ(尻尾のプラグ部分)が稼働するようにしました。90度折れるようにして、プラグをコンセントに差し込みます。そうすると、ぴったり壁にあたりますので踏む確率が低くなり、前よりも安全になる。そして、骨の部分をよく見てみると、尖っていません。丸くなっています。そして材質も、ゴムになりました。まずその「安全性」ということが、この2つの間にあります。それから「量産のしやすさ」というのもあります。型の抜き方の効率がいいかどうか、等々、量産する時にはそういう設計をしなければなりません。


 もうひとつ、これは『サバオ』というアート作品で、妊娠13週目の胎児の顔をした腹話術人形ですね【図4】【図4】クリックして拡大。「サバオでーす」というふうに喋るわけですが、こちらは商品になった『SAVAO』です【図5】【図5】クリックして拡大。この場合は先ほどの『魚コード』とはちょっと違って、「サバオ」というキャラクター、13週目の胎児が「サバオでーす」と言うおかしさをより強調して、コンテンツにしたものです。ちなみにこのSAVAOさんは音楽CDも発売しましたし、コンサートもしました。

 これ【図6】【図6】クリックして拡大が、明和電機の「ABCDEFG計画」と呼んでいるものなのですが、つまり、僕はアーティストなので、最初にアートを作ります。そのアートそのものを売るのは、いわゆる絵描きと同じなのですが、普通の絵描きと明和電機がどう違うかというと、その次にプロダクトを作ることですね。色々なプロダクトを明和電機は作っていて、「Art」、「Book」、「CD」、「DVD/Video」、「EXPO」、「Fashion」、「Goods」……と、各ジャンルの頭文字を取っているのが、この「ABCDEFG計画」。色々な商品を作ってお客さんに届けています。有名なところでは、この『ノックマン』【図7】【図7】クリックして拡大とか『ジホッチ』【図8】【図8】クリックして拡大……わざわざ時報を聞くための腕時計ですね。これは回転チャンネル式のテレビ・リモコンの『ガチャコン』【図9】
【図9】クリックして拡大
。あと、今は写真がありませんが、クワクボ君といっしょに作った『Bitman』【図10】【図10】クリックして拡大も、こういうプロダクトです。



2.3.2●商品の販売戦略

それからもうひとつ、商品を作ったら今度はそれをプロモーションしなければいけません。メディアアートやデバイスアートを商品化する、もうひとつの方法として、グッズを作って販売するということではなくて、「作ったアート作品を人に見せて入場料をゲットする」という方法があります。ひとことで言うと「ショー」ですね。見せる「ショー」の興行収入をゲットする。で、明和電機では楽器をたくさん作っていますので、それらを使ったライブ・コンサートをやっておりまして、そこから「メディアアートを見せて入場料収入を得る」ということも実際にやっています。最近では国内よりも、海外公演の方が多くなってきて、今年もスイスなどに行って公演してきました。

 今の例は音楽ライブだったのですが、もうひとつのショーが、「展覧会」です。たくさんある作品を見せて、やはり入場料収入をゲットするわけですが、展覧会の場合、入場料収益で大儲けになるということはあまりありません。岡山市のデジタルミュージアムで今年開催された展覧会でも3万人の入場者がありましたが、入場料収入そのものよりも明和電機の場合はグッズの販売がありますので、むしろそちら収入の方が多いくらいです。それからキャラクター展開。「ノックマン」という音を出すおもちゃのキャラクターを作ったりして……これ【図11】【図11】クリックして拡大はMoMAのショップで「ノックマン」グッズが販売されているところです。


それからもうひとつ、明和電機とは切り離して、「EDELWEISS(エーデルワイス)」という別のプロジェクトを僕、土佐信道名義でやっています。そちらのテーマは「女とは何か?」ということなのですが、このテーマをもとに僕は、まず物語を書きました。「EDELWEISS」の物語というシナリオ【図12】【図12】クリックして拡大を最初に書きまして、その物語を今度はビジュアル/絵に起こして、こういう人形【図13】【図13】クリックして拡大を作ったりし、最後はそこからオブジェ【図14】【図14】クリックして拡大を作っていくというシリーズをやっています。すべて、「EDELWEISS」の物語に関係したオブジェです。あと、関連して、和菓子なども作りました。

 この「EDELWEISS」が目指すのは、ポエムとファッションとテクノロジーが交わったようなものが作れないかな、ということです。そして、先ほどもお話ししましたように、この「EDELWEISS」は、まず最初にストーリーがあり、それからそのストーリーをビジュアル化したもの(絵だったり、人形だったり)があり、最後にそこからオブジェを作っていく……という3つの段階、3つの構造があります。実はこれ、そんなに目新しいことではなくて、例えば『スター・ウォーズ』だったら、『スター・ウォーズ』というシナリオが最初にあり、それから映画版があって、最後に『スター・ウォーズ』のグッズ/玩具なんかがありますよね。また古いところでお話をすると、『源氏物語』もそうです。あれも『源氏物語』というオリジナルのストーリーがあって、そこから『源氏物語絵巻』というビジュアルが生まれ、それから『源氏物語』の貝合わせ、硯箱、着物などが派生的に生まれていく。実はこれが「EDELWEISS」で僕が一番やりたいことなのですが、最初のポエム/ストーリーが最終的には日常の中で使われていくモノに落とし込まれていく……そういう芸術をやりたいと思っています。
 13年間明和電機をやってきて思うことは、「商品とは何だろう?」と言った時、まず商品というのは、売れなければいけません。アートというのは……まあプロのアーティストというのは、アート作品を売らなければ生活できないのですが、メディアアートと言われる作品の多くは、それを売ってなんとかお金をゲットしなければならないという類いのものではないと思います。しかし商品というからには、これは売れなければいけません。売るためには、やはりプロモーションが必要です。誰がその商品を宣伝するのか? 明和電機の場合は、なんと社長である私自らが世界中に行って、それを「いいでしょ? いいでしょ!」と言っている、ちょっと特殊な感じなのですが……。

 それからもうひとつ大事なことが、「リスク」ですね。お金のリスク。誰が量産のためのお金を出すのか? 実はここが、デバイスアートを商品化する時、かなりネックになるのではないかな、と思います。お金を出す側は、やはり儲けたいからそうするわけで、リターンがなければお金を出してくれません。ですから、必ず売れるものを作らなければいけない、ということがあります。


2.3.3●明和電機の歴史:アイディアがなければ生きていけない

なぜ僕がここまで、商品化、プロモーション、宣伝、あるいは「自分でモノを売る」ということにこだわり続けているかというと、おそらくは僕の生い立ちに問題があるのではないかと思いまして、そのお話をかいつまんでします。

 うちの父親は経営者ではなくて、新明和工業という飛行機の会社に勤めていて、そこでエンジニアをやっていたのですが、1969年に退職しまして、いわば脱サラしたわけです。そして「明和」という名前だけをいただいて、兵庫県の赤穂市に明和電機という会社を創りました。これは電機部品加工工場でした。最初は東芝、松下などの下請けをやっていて、当時は真空管やボリュームなどを作っていました。

僕が小学生の時、そのボリュームの部品を作るラインに入らされて、夏休み中、ベルトコンベアーの中で作業をしていました。真ん中にアルミ製のつまみ部分がありますが、その中にスプリングをひとつ入れるという作業を、1日1000個やらなければいけなかった。僕はそれが嫌で嫌で……。前日にあらかじめ準備しておいたものがラインの出発点になって、そこに色々な部品が付いていく。それを母親に「あんた、これを明日までに1000個やらなきゃダメよ!」と言われて、ひとつずつ入れていたのですが、目の前で初めての『24時間テレビ』が始まって……。「うわあ、すごいテレビが始まった!」と思って、気が散ってしまい、結局500個しかできなかったら、めちゃめちゃ怒られました。あと、指についたアルミの粉の匂いが、今でも忘れられません。


 パパが作った明和電機は、多い時には100人ぐらいの従業員を抱える会社になったのですが、1979年のオイルショックの影響で倒産してしまいます。倒産というのは、土佐家の中では大問題でして、これで家族がバラバラになってしまいました。ですから僕は、その出来事でトラウマができてしまったわけですが……にもかかわらず1993年に、自分は芸術家を目指していたのですが、発表する時にいわゆる「芸術家」というスタイルでは、どうも社会性がない、キャッチがないと思いました。それで、お兄ちゃんに声をかけて「明和電機という企画があるんだけれど、電機屋のスタイルでこういうものを発表するのはどうだろうか?」と話をしたところ、非常に盛り上がりまして、2人で明和電機というユニットをやったのですね。

 ひとつはオヤジが潰した会社のトラウマを超えていきたいという思いがありました。この新しい会社はナンセンス・カンパニー、つまり「嘘の会社」です。そこで、面白おかしいプロダクトを作ったり、CDやライブ活動などをやっていったのですが……2000年にいきなりお兄ちゃんが明和電機辞めてしまって、僕1人になってしまった。それで、やはり僕は、親爺の会社が潰れた時の悲惨さというものが身に染みてありました。

 モノを作っていく仕事は、時代とずれてしまうと潰れるんだな、と。オイルショックで会社が潰れた時、親爺の会社は可変抵抗を作っていたのですが、そんなものはアジアでもっと安く作れる時代になってしまっていたわけですね。だけど、オリジナルのものを親爺の会社は作れなくて、潰れてしまった。そういうこともあり、モノ作りはやりたいのだけど、アイディアというものがなければ生きてはいけないんだな、ということが、自分の中に痛みとしてすごく残っているのも、今の「プロダクツを作る」というところに繋がっているのではないかと思います。


前へ 1  2  3 次へ

2.3.4●『Knock!』

最後に今回の展示の話を少しだけしておきます。『Knock!』という企画で展示をしています【図15】【図15】クリックして拡大。これは「Tsukuba」という楽器のシリーズを作った時に、基本となったのがすべてノックをする機械だったのですね。それを組み合わせて色々な楽器を作っていったわけです。で、後日グッズ化された「ノックマン・ファミリー」に代表されるのですが、ノックというのはコミュニケーションだな、という自分の中の思想もありました。「Tsukuba」と「ノックマン」、その2つの考え方を組み合わせて、『Knock!』というものをやりたいと思っています。

 今朝もワークショップをやってきたのですが、参加者にモノを持ってきてもらい、それに「ノッカー」(ノックをする装置)【図16】【図16】クリックして拡大を取り付け、スイッチを取り付けて、最後はコンピュータでそれらを鳴らしました。これは、商品を作るということではなくて、それとは考え方がちょっと違って、この『Knock!』を通してテクノロジーというものをみんなに知ってもらえないかな、という思いがあります。スイッチを押す入力と、音が出るという出力……簡単なその仕組みを出発点として、色々なデジタル技術や通信技術の概念のようなものが頭の中にできてくれないかな、という思いがあって、この『Knock!』というワークショップ、教育プログラムをやってみたいと思っています。

 そのためにはそれをやるための道具が必要で……「ノッカー」やインターフェイス、それからソフトウェアも含めて、楽器というものが全くないところから楽器を作るという、そうした「遊び」のようなものが新しくできたらいいなと思っております。とりあえずこれで発表を終わります。


草原:土佐さん、ありがとうございました。話が今日のポイントにだんだん近づいてきたところで、しかも全体の時間の半分のところでちょうど前半が終わるというスケジュール通りの進行になっております。ではこの後、ドミニク・チェンさんにも参加していただいて、パネル・ディスカッションに入るわけですが、その前に10分間の休憩を取ります。