CREST Project
Device Art Symposium "Reflections on Commercializing Media Art"
Introduction
by Machiko Kusahara


CRESTプロジェクト
デバイスアートシンポジウム「メディアアートを商品化するということ」

イントロダクション:草原真知子
2007年9月30日@日本科学未来館7F:みらいCANホール


0■草原真知子:イントロダクション

草原:デバイスアート・チームの一員である、早稲田大学の草原です。今日のテーマは「メディアアートを商品化するということ」で、企画の主旨を最初に説明いたします。このあと、岩田先生の方からも、このデバイスアート・プロジェクトのオーバービュー(概略)についての解説をお願いしていますけれど、今回の展示にも出品されているように、メディアアートの作家たち、あるいはそれに関わる研究者たちは、いわゆる「1点もの」の作品だけではなく、むしろたくさんの人が使えるような作品を作り、ここに展示しているわけです。

 「Thames & Hudson」という、アート関係ではけっこう有名な出版社から来年刊行される予定の「デザインとアートとテクノロジーをどう関連づけるか」という趣旨の本の原稿を、ちょうど今、私は書いているところでして、このデバイスアートのメンバーの作品も、そこで紹介される予定です。

 私自身、そういったデバイスアートを紹介する原稿を書いていくうち、海外のコンファレンス等で色々な人からそれについての質問を受けるようになりました。最近では「博士論文でデバイスアートについて扱いたい」といった問い合わせが来たり、つい最近もヨーロッパの高校生から「(大学入試のための)バカロレアの論文テーマにデバイスアートを選んだので、質問に答えてほしい」と言われたり……海外でもこの分野が非常に注目されています。

 その背景にあるのが、「アート」と「テクノロジー」と「デザイン」のボーダーが、世界的に変化しつつあるということでしょう。その中で、アーティストが自分自身の作品やアイディアを商品化するところまで、デバイスアートの作家は、すでにやってしまっている。と同時に、それが社会的にも受け入れられている。そういう意味では、やはり日本がトップランナーなんですね。デザイナーがアート的な作品を作る。あるいは、アーティストがデザイン的なプロダクトを作る。その辺のコンセプトまでは受け入れられたとして、その先……つまり「どうやって実際の商品化までこぎつけるのか?」という質問をよく受けます。

 それからこのプロジェクトにおいて、我々が考えているデバイスアートのコンセプトの背景に、いわゆる「日本の文化的伝統」というものを取り上げてきたわけですが、その辺のところでも「やはり日本はアートに対するアプローチが違うのだろうか?」とか「こういった分野に対する公的なサポートが、日本にはあるから可能なのか?」とか、様々な質問を受けています。

 ただし、こういう分野が世界的にホットになってきているのは、このデバイスアートというコンセプトのみならず、例えば「オープンソース」というような運動、それから「Do It Yourself」……これは『Make』というマガジンがあって、今では日本語版も出ているようですが、アーティストやエンジニアが自分たちのアイディアやノウハウを他の人たちに公開し、みんなでそれをシェアするというような動きが世界的に高まってきていることも無関係ではありません。どのようにしたらそういう考え方を、アートの世界に真摯に取り込んでいけるかが、今問題になっているところです。そのように、アメリカでは「Do It Yourself」などの運動が盛んである一方、ロンドンではアートとデザインの関係性が非常に面白い状態になってきています。実際、いわゆるデザイン・ムーブメントというものは、イギリスにおいて非常に強い歴史がありました。また東欧でも色々な動きが起こっているようです。そういった背景があるがゆえに、我々がやっていることが世界的な注目を集めているとも言えます。実際問題、いわゆる西欧的な美術史観がかなり行き詰まりをみせているわけで……その、いわゆる西欧型の美術史観ではない、アートとテクノロジーの関係、アートと商品の関係、アートとエンターテインメントやデザインの関係、そういったものをどう主張していくか、実証していくか、というところが、大変注目されているような気がします。

 というわけで、ちょっと前置きが長くなりましたが、今日は実際に自作の商品化に取り組んでいる、あるいは普及型のプロダクツやプロジェクトに取り組んでいるメンバーのアーティストに、それぞれ現状についての報告、それから考え方などをお話ししていただきます。

 と同時に、「クリエイティブ・コモンズ」のドミニク・チェンさんにも今日お越しいただいていますので、こうした分野について多面的にディスカッションしていけたらと思います。では最初に、プロジェクト・リーダーの岩田先生の方からお願いします。